18世紀の製本について(part 3)

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Sep 6
2014
Posted in blog, miracle world by Minako at 12:54 pm | No Comments »

やっと秋めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
快適な気候とともに、読書の秋、食欲の秋、ドリュールの秋、と三拍子揃うのが待ち遠しいです。

今回は18世紀の製本最終章です。フランス革命により、栄華を誇ったフランスルリユール界にも変化が訪れます。


18世紀も半ばを過ぎたあたりに、新しい「豪華なイギリススタイル」がフランスにふっと現れ、製本家(とりわけドゥローム)は次々と熱狂的信者になっていきました。
背には点描の線でひし形がデザインされたり、ギリシア風モチーフのパレットが使用されていたこのイギリス様式は、これまでのフランスの伝統装飾を否定しつつ、後に古典的・牧歌的なテイストが加えら、19世紀の装飾スタイルに影響を与えていきます。

拍車のかかるイギリススタイル傾倒を尻目に、老いた職人たちは今までの自分たちのやり方に戻ろうと頑張りましたが、フランス風のフェールを組み合わせてデザインされた装飾は衰退していきました。

そして、とうとうフランス革命が起こります。

特権階級の貴族の崩壊を望む、生活に苦しむ市民により起こったフランス革命は、豪華絢爛さや贅沢を否定し、これまでの美術界に打撃を与えていきました。ルリユールも例外でありませんでした。
何より先に自分の命の心配をしなければならないこの激動の時に、本のことなど考える余裕はなく、製本家たちは普通製本しか行わなくなっていきました。
国民公会により、ルリユールへの貴族の紋章の使用も禁じられました。
簡素な装飾のみが許され、豪華なダンテル様式は「貴族的ルリユール装飾に加担している!」「革命的理想に反している!」として拒絶され、モザイク、さらにはイギリス風装飾までもが消えていき、代わりにありきたりな囲み線や平凡なルレットが押されるのみでした。

さらに製本家たちは、国立国会図書館のために製本したすべての本に、自由・平等を意味する「R.F.(République Française)」のイニシャルの入った(ダサい)モチーフを押すことを余儀なくされました。
この決定は金持ち客を相手に高い技術を持って仕事をしてきた製本家とドラーに混乱を招きました。職人としての誇りが粉々に砕かれていきます・・・。
豪華な装飾用に使用されていた花型やルレットなどの道具も「反共和的」として、軍事用の道具に作り変えられるべく溶かされていきました。ああ、なんと嘆かわしい・・・。

フランス革命時期に「R.F.」のイニシャルとともに、最も頻繁に用いられたのは、槍のてっぺんに配置されたフリジア帽のモチーフでした。そして、スローガン「Union-Force-Liberté」も忘れてはいけません!

そのころになると、人々は本をブーツのように扱い、丈夫に末永く受け継がれていくことに対する考慮や装飾に対するセンスには注意を払わなくなっていました。
製本家たちもプロとしての意識を消失し、過度なグレカージュや、本文の余白を考慮しないロニアージュを平気で行い、優れた製本家たちでさえ単なる作業人に成り下がってしまいました。

安価に仕上げることのできる製本として、半革装やブラデルも導入されていきます。
全体を紙を使って作ることのできるカルトナージュのようなブラデルは、その名も製本家ブラデルが考えだしたもので、リボンを支持体としてかがり、ロニアージュはしないもので、タイトルはピエスを貼ってその上に押します。この暫定的なルリユールは値段が安いため、自分の本を末永く保存したいと願うお金のない愛書家たちを魅了していきました。

ルネサンスから18世紀まで一気に繁栄していったフランス・ルリユールでしたが、王様や貴族が主な顧客であったきらびやかな時代は終焉を迎えていくのでした・・・。


つづく



  1. It‘s quite in here! Why not leave a response?




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