19世紀の製本について part 6

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Oct 31
2017
Posted in blog, miracle world by Minako at 09:00 am | No Comments »

季節外れの台風の上陸に、災難を被った地域の方々にはお見舞い申し上げます。
製本界の台風のような(?)19世紀もあとちょっと、です。


【イギリスの風、トヴナン以降】
イギリス人の愛書家でもある作家T・Dは、自身の旅行記において、19世紀の、中でもアンピール期のフランス人製本家の作品をこっぴどく批評しました。
「エレガントのカケラもなく、素材も粗悪で、もはやフランスルリユールの栄華もこれまでだ」と。

フランス国内でもしょんぼりムードがあったかなかったかはわかりませんが、奇しくも「大陸さまフランス」に「島国イギリス」の風を吹き込んだボゼリアンを師匠に持つ、
ジョゼフ・トヴナンは黙っていませんでした。
トヴナンは、全ての工程がこなせる職人になるべく、11歳でボゼリアンの工房に弟子入りしました。
徐々に箔押しに情熱を傾けるようになり、独立します。
トヴナンは、従来の簡素な装飾にとどまることなく、イギリスデザインを研究し、自らフランス風に発展させていきました。
彼の素材にこだわる丁寧な仕事と技が功を奏し、19世紀フランスルリユールもさらなる進展を遂げました。

全体を通して、懐古主義傾向の強い19世紀は、16・17・18世紀のモチーフをミックスしたハイブリッドな装飾であるパスティーシュも流行しました。
モチーフのデザインはオリジナリティーには欠ける部分も多々ありましたが、それぞれの作品の仕上がりは完璧だったと言います。

そんな中で、世紀をまたがり箔押しに情熱を傾けたもう一人の職人が現れます。

20世紀は、「彼」からスタートです。

つづく・・・。



  1. It‘s quite in here! Why not leave a response?




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